県内産木材の活用
神奈川県住宅供給公社では小田原地区木材業協同組合と連携し、神奈川県産の木材を賃貸住宅等の内装材に活用しています。これまで日本の林業は数十年サイクルの木の再生循環をうまく回していましたが、現在はそれが厳しい状況になりつつあります。若い木は多くのCO2を吸収して成長しますが、成長した木はCO2の吸収速度が落ち、そして、木が売れる大きさになるまで40~50年かかります。安い輸入材に押され、国産材は需要が減っていることから、日本の山には木が余っている状況で、若い苗に植え替えることが難しくなっています。しかし、地球温暖化の原因である二酸化炭素を減らすのには植物の力に頼る必要があります。そんな中、県産材の活用には脱炭素と地産地消がもたらす効果があると注目されています。
写真提供:小田原地区木材業協同組合
木を住宅に使うことによる炭素の固定化
伐採した木が生えていた場所に若い木を植えて育て、伐採した木を燃料などにせずに木の状態のままとすることで、大気中のCO2を減らすことができます。住宅に使用する木は何十年と寿命が長いので、その材料に使うことで、木材に貯蔵した炭素を長期間維持できることから、地球温暖化の対策につながります。
輸送にかかるCO2の削減
輸入材を日本まで運ぶには、船など化石燃料を使うことになります。輸送過程の二酸化炭素排出量は国産材と比べて比較的近い中国材で1.8倍、欧州材だと9倍以上という研究もあります。
(一般社団法人 ウッドマイルズフォーラム「木材の輸送過程の二酸化炭素排出量」:https://www.woodmiles.net/chart/2_index_detail.php)
公社の県産材活用は地元産の木を地元で加工し、地元で使っています。コストの問題があるので、なかなか公社の全物件に採用することは難しいですが、輸送にかかるエネルギーは大幅に少なく環境にやさしいことから、一部物件での継続した取組みとしています。
【木の循環】
地産地消による地元経済への寄与
林業、製材業、建設業がすべて地域内で行うことができれば、地域の仕事が増えます。また、木の循環だけでなく、お金の循環もほかの地域や国に出ていかず、地域内で循環し、地域活性化につながります。
二宮団地
「二宮団地」(中郡二宮町)では、「暮らしを楽しみながら働く」「ほしい暮らしをみんなで創る」をコンセプトとして、「さとやまライフ」の楽しさや魅力を創出できる、「住まい」と「暮らし」を提案しており、その一環で隣接する小田原産の杉材を使ったリノベーションを行っております。厚さ25mmの杉無垢材(むくざい)のフローリングやオリジナルの杉製キッチンなど、個性的な住戸です。なお、このリノベーションは設計・デザインから製材、施工までを小田原地区木材業協同組合と連携して実施。地産地消、地域創成型プランとして、地域経済の発展に寄与することも目指しています。
アンレーベ横浜星川
「アンレーベ横浜星川」(横浜市保土ヶ谷区)は、1954(昭和29)年に竣工した「桜ヶ丘共同住宅」を"1棟丸ごとリノベーション"した賃貸住宅。築60年以上が経過した建物は老朽化が進み、設備面も陳腐化し空室が目立っていましたが、躯体の耐震性が認められたため、躯体は残して、その他の外装・内装・設備等を更新し既存ストックの活用を図ったものです。フルリノベーションした住戸においては、商品価値の向上として、居室の床材には小田原産杉無垢材(むくざい)フローリングを使用しました。居住者の入退去がある賃貸物件で、材質が柔らかい杉無垢材を使用するのは珍しいのですが、市販のフローリングにはない温かみや自然の風合いが人気を得ている人気物件です。
Kosha33
2018(平成30)年、横浜市中区にある公社本社ビル1階を情報発信の拠点「Kosha33」として整備しました。幅36m、日本初の西洋式道路である日本大通りに面した、全面ガラスの窓で開放的な空間とし、外から見てもただのオフィスビルでなく、温かみのある空間づくりを目指し、県内産の小田原杉の無垢材(むくざい)を約300m²に使用。床材の厚さは25mmあり、木の中心に近い木裏(きうら)部分を表面にし、赤味が美しい状態を採用されています。なお、1階床の小田原杉の下には、公社が所有する共同里山(小田原市小竹)の竹林整備により切り出された真竹を若葉台炭焼き工芸普及会と湘南二宮ふるさと炭焼き会が竹炭として制作し約500kg敷き詰められ、消臭浄化効果が期待されます。
※現在、公社ビル改修工事のため、Kosha33は休館中です。